共有不動産については、「相続税の納税資金を用意したいが共有者の同意が得られない」「話し合いがまとまらず活用や開発が進まない」「修繕や賃貸の意思決定ができない」「他の共有者が同意なく勝手に使っている」など、さまざまな相談が持ち込まれます。
共有者が望むのは、停滞した状況を動かしてそれぞれの目的を早期に実現することです。共有者は訴訟に至ることは望んでおらず、訴訟に勝つことが本質的な目的ではありません。

本記事では、不動産コンサルティングの立場から、共有不動産が動かなくなる理由を整理し、競売という最後の手段に行きつく前に依頼者の手取りを最大化する解決の進め方を、弁護士との連携も含めて解説します。
なぜ共有不動産は「身動きが取れない」状態になりやすいのか
共有不動産が塩漬けになりやすいのは、法律上のハードルと、共有者同士の関係性という二つの要因が重なるためです。
共有物の管理・処分に必要な同意のハードル
共有不動産では、何をするかによって必要な同意の範囲が変わります。
民法は共有物に関する行為を保存・管理・変更(処分)の3つに区分しています。保存行為は各共有者が単独で行えますが、賃貸借契約の締結や解除といった管理行為には持分価格の過半数の同意が必要です。売却や建物の取り壊しなど変更・処分にあたる行為は、原則として全員の同意が求められます。
そのため、共有者の一人が売却に反対すれば、不動産全体の売却は進みません。

なお、共有者が所在不明で連絡が取れないケースについては、令和5年4月施行の民法改正で対応する制度が設けられました。裁判所の関与のもと、所在等不明共有者の持分を取得したり、その持分を含めて不動産全体を第三者に譲渡したりできる制度です。ただし供託や公告の手続きが必要で、遺産共有の場合は相続開始から10年の経過が要件になるなど、一定のハードルは残ります。
所在不明の場合に打てる選択肢は増えた一方、合意しない共有者がいる状況では、全体の売却が止まりやすい構造に変わりはありません。
相続の重なりによる共有者の増加と関係の希薄化
共有者が増え関係が希薄になるほど、合意形成は難しくなります。
当初は兄弟2人の共有でも、相続が発生すればその子や孫へと枝分かれし、互いに面識のない関係になることも珍しくありません。連絡先が分からない、疎遠で話し合いに応じてもらえない、思惑が異なるといった事態が重なると、全体での合意形成は難しく、不動産はさらに動かしにくくなります。
法律上のハードルと人間関係の問題が絡み合う点に、共有不動産特有の難しさがあるのです。
共有状態を解消する方法は一つではない
共有状態を解消するアプローチは大きく「自身の持分のみを単独で処分する方法」と「共有状態そのものを全体として解消する方法」の2つに分かれます。
前者にあたるのが共有持分の買取、後者にあたるのが現物分割・換価分割・賠償分割です。

このうち裁判所を通じた共有物分割では、現物分割と賠償分割(全面的価格賠償)が並列の方法とされ、これらができない場合や分割で価格を著しく損なうおそれがある場合に、換価分割(競売)が命じられます(民法258条)。
共有持分の売買
特定の共有者や第三者が、他の共有者の持分を個別で単独売買する方法です。
共有持分は、他の共有者の同意がなくても各共有者が単独で処分できます。そのため、全員の合意が得られない場面でも進められる点が特徴です。一部の共有者だけが不動産を残したい場合や、早期に共有関係から離脱したい共有者がいる場合に向いています。
ただし、持分だけの売買は不動産全体を売る場合より価格が下がりやすく、買い手によっても事情が変わります。他の共有者が買い取る場合は、すべての持分を取得するのでなければ単独での活用が難しく、買い取る資金を用意できるかという問題もあります。一方、共有者以外の第三者に売る場合は、持分だけを買いたい買い手を見つけること自体が簡単ではありません。
現物分割
土地を分筆し、各共有者の単独所有に分ける方法です。
共有関係そのものを解消でき、各自が自分の土地を自由に使えるようになります。面積が広く分割しても価値を損なわない土地に向いている一方、分筆によって各区画の形状や接道条件が悪くなり、価値が下がる場合もあります。建物が建っている土地や狭小地では、そもそも現物分割が難しいケースが少なくありません。
とりわけ借地権が共有になっている場合は、現物分割が実質的に難しくなります。借地権を分けることは一個の借地契約を複数に分けることを意味し、どう分けるかの線引き自体が容易ではありません。さらに、分割によって不整形地が生じたり接道条件が悪化したりすると、土地の価値が下がって地主の不利益になるため、そうした分割は認められにくいのが実情です。仮に共有者間で分割の判決を得ても、地主から借地契約を解除されるおそれが残ります。こうした事情から、借地権については現物分割は現実的な選択肢になりにくいといえます。
換価分割
不動産を売却し、その代金を持分割合に応じて分ける方法です。
不動産を残す必要がなく、現金化して公平に分けたい場合に適しています。相続税の納税資金を確保したいケースとも相性がよい方法です。
ここで重要なのが、換価分割には二つの道がある点です。共有者間で売却の合意が整えば任意売却の形で進められますが、合意に至らなければ裁判所を通じた競売による換価となります。同じ換価分割でも、任意売却か競売かで売却価格は大きく変わります。この違いが、次に述べる出口戦略の出発点になります。
賠償分割(代償分割)
共有者の一人が不動産を取得し、他の共有者にはその持分相当額を金銭で支払う方法です。
売却して代金を分ける換価分割とは異なり、不動産そのものは特定の共有者の手元に残ります。先祖から受け継いだ土地を手放したくない共有者がいる場合や、不動産を取得したい共有者に十分な支払能力がある場合に向いている方法です。
一方で、不動産を取得する共有者に資力がなければ成立しないため、賠償金をどう用意するかが現実的な課題になります。
実務の進め方 ─ シナリオ策定と出口の確保
依頼者が早期の現金化を望む場合、鍵になるのは解決までの全体像を描く「シナリオ策定」と「出口(売却先)の確保」です。
依頼者の目的を起点に全体のシナリオを描く
出発点は、依頼者が何を実現したいのかを明確にすることです。
ひとくちに「共有状態を解消したい」といっても、その動機はさまざまです。一方には、相続税の納税資金を用意したい、まとまった現金を早期に得たいといった、前向きな目的があります。他方で、管理や活用が難しい不動産を手放したい、固定資産税や地代といった管理コストの負担から逃れたい、共有者同士の関係が希薄で今後できるだけ関わりたくない、といった消極的な動機から解決を望むケースも少なくありません。
どちらの動機であっても、まず依頼者が本当に求めているものを見極めることが起点になります。たとえば同じ「売却したい」という相談でも、納税期限までに現金を用意することが最優先なのか、価格が多少下がっても早く共有関係から抜けたいのかによって、取るべき道筋は変わります。目的が定まれば、そこから逆算して、どの共有者にどう働きかけ、どの手続きをいつ使い、最終的にどう現金化するかという全体のシナリオを組み立てます。
シナリオ選定で重視されるのが、共有者との話し合いのきっかけを友好的に整えることです。 共有不動産が動かない背景には、法律上の問題だけでなく、共有者同士の心理的なわだかまりや警戒心があります。先祖から受け継いだ土地を手放すことへの抵抗も、合意を妨げる要因の1つです。こうした感情面に配慮しながら現金化という合理的な提案を示すことで、対立を避けて合意に近づけていきます。

訴訟・非訟手続きは「話し合いの場につく」ための手段
共有不動産の問題解決において、訴訟や非訟手続きは、相手を打ち負かすための道具ではなく、話し合いに応じない共有者を交渉のテーブルにつかせる手段です。共有物分割請求や借地非訟は、停滞した話し合いを動かすきっかけとして機能します。
競売はあくまで最後の手段です。競売による売却は市場価格を下回りやすく、その損失は共有者全員の取り分を押し下げます。一般に競売の落札価格は市場価格の6割から7割程度にとどまるといわれます。内覧が自由にできない、引渡しがスムーズに進むとは限らない、残置物が残っている可能性があるなど、買主側の不確実性が価格に織り込まれるためです。
さらに、競売には時間と費用もかかります。換価分割の判決を得た後、形式的競売を申し立てると、現況調査や評価を経て売却に至るまで数か月を要し、訴訟期間と合わせれば全体で1年以上かかることも珍しくありません。申立てには予納金も必要です。加えて、抵当権付きの不動産で債務額が物件価値を上回る場合には、競売を申し立てても配当が見込めず手続きが取り消されることがあります。競売は「安く・遅く・確実とは限らない」出口であり、依頼者の利益を考えれば優先すべき選択肢ではありません。
だからこそ、競売は最終手段であり、その前に現金化できる合理的な道筋を示すことが有効です。多くの場合、合理的な提案があれば判決を待たずに和解で解決へ向かいます。法的手続きを背景にしつつ出口(売却先)を事前に確保しておくことで、競売に至る前に全員が納得できる解決を実現できる可能性が高まります。
弁護士との連携で進める
シナリオ策定と売却先の確保では、弁護士との連携が重要となります。
法的手続きは弁護士が担い、不動産コンサルティング会社が不動産の評価、ネットワークを活用した買主の確保、道路付けや共有などクセのある不動産の売却条件の調整可能性をふまえた実務的なシナリオ構成と実務遂行を担当します。
役割を分担しつつ一つのシナリオを共有することで、依頼者にとって最善の解決へ近づけるのです。
共有者の一部が非協力的なときの選択肢
共有者の一部が話し合いに応じない場合でも、打つ手はあります。前述のとおり共有持分は単独で処分できるため、協力的な共有者の持分だけを先行して動かすことが可能です。その共有者は早期に現金化でき、膠着した状況を動かすきっかけになります。
さらに、第三者や専門業者が持分を取得して共有関係に加わると、それまで動かなかった協議や分割の交渉が進み出すこともあります。全員の合意を待つだけでなく、こうした持分単位での働きかけを組み合わせることで、出口に向けた現実的な一歩を踏み出せるのです。停滞した案件ほど、どの順番で誰の持分を動かすかという設計が解決のスピードを左右します。 共有者が反対しているのではなく、所在が分からず連絡が取れないという場合には、前述の所在等不明共有者の持分取得・譲渡権限付与の裁判の活用も視野に入ります。供託や公告などの手続きを要するため一定の時間はかかりますが、所在不明の共有者を理由に出口がふさがれるとは限りません。どの共有者がどういう状態にあるのかを見極めたうえで、使える手続きと売却の段取りを組み合わせることが、解決への近道になります。
まとめ|法的解決と出口確保の組み合わせで手取りを最大化する
共有不動産の問題は、法的な権利関係の整理と、確実な現金化のための出口(売却先)の確保という二つの専門性がかみ合って解決へ向かいます。弁護士が法的手続きと交渉を担い、不動産コンサルティングがシナリオ策定と出口(売却先)の確保を担う。この組み合わせが、競売という最終手段に至ることなく共有不動産で身動きがとれないという問題の解決を可能にします。
共有不動産は、身動きが取れないように見えても、依頼者の目的を起点にシナリオを描き出口を確保すれば、判決を待たずに解決できるケースが少なくありません。当社は借地権・底地・共有といった権利関係に課題のある不動産の解決を専門とし、弁護士と連携しての実績を重ねています。共有不動産の現金化や停滞した案件の出口にお悩みの際は、ぜひ一度ご相談ください。