借地の地代相場は「固定資産税の3倍程度」だと一般に言われています。実際には、周辺環境や経済情勢によって異なり、金額も変動するため、定期的な見直しが必要となることがあります。ここでは、旧法借地権を中心に、地代改定の条件や交渉方法と、地代相場の具体的な計算方法について解説します。
地代改定のタイミングと交渉方法
毎年の地代は、経済情勢の変化や周辺環境の変化により、設定当初の金額が適正価格から乖離することがあります。そのため、借地借家法では一定の条件のもと、地代の増減請求を認めています。ここでは、地代改定の具体的な条件と、実務的な交渉の進め方について解説します。
借地法で定める地代改定のタイミング
旧借地法第12条および借地借家法第11条では、地代が不相当となった場合の増減請求権を定めています。増減のどちらかを請求できる場合として法律で定められているのは、次のような場合です。
- 土地に対する税金等の公課が増減したとき
- 土地の価格が上下したとき
- 近隣の土地の地代・賃料と比べて不相当になったとき
上記以外にも、近隣の同様の土地の地代と比較して著しい差が生じている場合や、経済事情の変動により現在の地代が不相当となった場合にも、地代改定を請求することができます。とくに、インフレーションの進行や、再開発による地域の価値向上などは、地代改定の重要な判断材料となります。
地代改定を阻む継続地代の問題
借地について定める法律では地代の改定が認められるとはいえ、実際には簡単ではありません。相場どおりの地代で合意できるのは、新規で賃貸する場合に限られるのが原則です。すでに賃貸借関係にある状態だと、これまでの経緯や契約内容、契約中の事情の変更を考慮した適正な賃料(=継続賃料)があるとされ、継続賃料の範囲を超える地代はなかなか認められないのです。
地代改定の方法・交渉のポイント
地代改定を進める際は、まず改定の根拠となる資料を十分に準備することが重要です。近隣の取引事例や固定資産税評価額の変動、地価公示価格の推移などを収集し、改定の必要性を客観的に示せるようにします。
交渉を始める前には、相手方に対して書面で改定の意向を通知します。この際、一度に大幅な改定を求めるのではなく、段階的な値上げ(値下げ)の案も用意しておくことで、相手方との合意形成がスムーズになる可能性が高まります。
話し合いによる合意形成が難しい場合は、調停や訴訟という選択肢もあります。これらの手続きには時間とコストがかかります。また、当事者の関係悪化にもつながりかねないため、できる限り話し合いでの解決を目指すことが望ましいでしょう。
地代相場の具体的な計算方法
地代相場を算出する方法は複数あり、土地の状況や用途によって適切な計算方法を選択します。以下で紹介するのは、新規で賃貸借するときに使用される5つの計算方法です。
■公租公課法による算出方法
……住宅地の場合:借地料(年額)=(固定資産税+都市計画税)× 2~5倍
……商業地の場合:借地料(年額)=(固定資産税+都市計画税)× 5~8倍
■路線価法による算出方法
……借地料(年額) =(路線価 ÷ 80%)× 土地面積 × 地代相場の割合※
- 住宅用地:更地価格の1.5%から3%程度
- 商業用地:更地価格の4%から5%程度
■積算法による算出方法
借地料(年額) =(土地価格 × 期待利回り)+ 必要経費
■賃貸事例比較法による算出方法
……以下の要素から個別に判断
- 立地条件(駅からの距離、商業集積度等)
- 土地の形状(間口、奥行、面積等)
- 法的制限(用途地域、建ぺい率等)
- 周辺環境(日照、通風、騒音等)
■収益分析法による算出方法
……(事業用地の場合)想定される事業収益などから地代を逆算
まとめ
地代相場は、複数の計算方法と考慮要素があり、適切な方法を選択することが重要です。また、地代改定を行う際は、借地借家法の規定を踏まえつつ、借地人との良好な関係を維持できるよう、丁寧な交渉を心がけましょう。地代に関する判断が難しい場合は、不動産の専門家に相談することをおすすめします。