私道問題|私道も相続登記が必要!調査方法と登記について

私道問題|私道も相続登記が必要!調査方法と登記について

執筆者:宅地建物取引士 樋口 力敏

執筆者:宅地建物取引士 樋口 力敏

四谷不動産コンサルティング代表
保有資格 / 中小企業診断士・宅地建物取引士

四谷不動産コンサルティング代表
保有資格 / 中小企業診断士・宅地建物取引士

sidou_touki

相続手続きを行う際、建物が建つ敷地の相続登記だけ行い、私道は見落とされるケースが少なくありません。私道は固定資産税が課税されないことが多く、この場合は納税通知書にも記載がないため、その存在自体を認識できないことが多いのです。ここでは、被相続人(=亡くなった人)の名義となっている道路部分の登記の必要性について解説します。

私道の相続登記とは

私道とは、市区町村などの行政が管理する公道と異なり、個人や法人が所有する道路のことを指します。こうした道路のうち「公共用に供する道路」(公衆用道路)と認められるものに固定資産税の課税はありませんが、依然として登記簿に記載されている名義人の所有です。つまり、所有者が亡くなった場合は相続財産となり、ほかの不動産と同様に、相続登記によって登記名義人を変更する必要があります。

私道の相続登記を見落とすリスク

私道の相続登記の見落としは、将来的に深刻な問題を引き起こす可能性があります。とくに、不動産の売却時や建物の建て替え時に大きな支障となり、相続人の増加により解決が困難になるケースも少なくありません。

現在の所有者にとってもリスク

私道の相続登記が未了のまま不動産売却を進めようとすると、売却が困難になります。未登記のままだと買主側で所有権移転登記ができないことや、接道義務を果たせず再建築不可となる可能性があること、そして下記の問題が原因です。

最大の問題点は、私道の共有者や所有者以外の利用者につき、知らないあいだに迷惑をかけてしまうリスクです。相手方にとっては、私道の通行や各種工事(路面の整備やライフライン設置など)につき、合意を得るべき相手が誰か特定できず、利用に制限がかかってしまう恐れがあるのです。

私道に関わる第三者が負うリスク

相続登記が完了していない私道について主にリスクを負うのは、その私道の共有者や、近隣に住む私道の通行を必要とする人です。

共有する道路に何らかの設備を設置する必要がある場合、原則としてほかの共有者と合意しなければなりません。そんなとき、共有者の登記名義人が故人になっていると、現在の所有者(共有者)が分からず調査の手間を負うことになります。通行する必要のある近隣住民も同様です。

このような状況に陥ると、土地の利便性に支障をきたし、近隣を巻き込んで物件本来の評価がなされない(価値が低下する)可能性があります。

私道の存在を確認する方法

登記申請すべき私道の存在を確認する方法

私道の情報は登記簿や課税関係の資料に掲載されていますが、これらによる存在の確認にはコツがあります。非課税のためや納税通知書に記載されていないことが多く、令和8年4月以降の「所有不動産記録証明制度」が利用できるようになるまで登記簿の名寄せはできないためです。相続した道路を確認する方法としては、下記のようなものがあります。

課税台帳・名寄帳による確認方法

課税台帳や名寄帳は、市区町村が課税のため管理する不動産の一覧です。不動産所在地の役場で取得でき、同一の名義の土地・建物の情報を一括で取得できます。もっとも、非課税となっている土地(私道含む)かどうかは自治体によって異なるため、注意を要します。

権利証での確認方法

権利証(登記済証・登記識別情報通知)には、不動産の表示部分に地目や地番、所有形態が記載されています。「公衆用道路」という地目や、複数名での共有形態になっている土地があれば、私道である可能性が高いと考えられます。また、権利証と一緒に保管されている図面等も確認し、関連する不動産の有無をチェックしましょう。

共同担保目録の確認

共同担保目録は、金融機関が住宅ローン等で抵当権を設定する際、複数の不動産を一括して担保とした場合に作成される書類です。登記事項証明書に記載があり、抵当権設定時に金融機関が調査した不動産の一覧を確認できます。通常、私道も含めて担保設定されるため、共同担保目録の確認は私道発見の重要な手がかりとなります。

売買契約書の確認

不動産売買契約書には、売買対象となった不動産が全て記載されています。契約書の物件目録や物件の表示を確認し、公衆用道路の記載や共有持分の表示がないかチェックします。特に土地を購入した際の契約書では、前面道路の権利関係も含めて売買対象となっていることが多く、私道の存在を確認する重要な手がかりとなります。

固定資産税課税明細書の確認

固定資産税課税明細書では、課税対象となる不動産の一覧を確認できます。ただし、公衆用道路は非課税のため、通常は記載されません。現況の地目欄に「公衆用道路」の記載がある場合は私道の可能性が高く、評価額も記載されていないことが一般的です。非課税物件については、別途市区町村に確認する必要があります。

私道の相続登記手続き

私道の相続登記手続きは、一般の不動産の相続登記と基本的な流れは同じですが、共有持分の移転や公衆用道路の評価額計算など、いくつかの特殊な点があります。以下では、私道の相続登記に必要な書類や手続きの具体的な進め方について解説します。

必要書類一覧

私道の相続登記にあたっては、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、印鑑証明書、遺産分割協議書または遺言書が必要です。加えて、登録免許税の計算のため、固定資産評価証明書を準備します。

もっとも、公衆用道路の場合は固定資産評価額が記載されていないことが多く、近傍地(周辺の宅地)の評価額証明書も必要となる場合があります。これは法務局で近傍地を特定した上で、市区町村で取得することになります。

登録免許税の計算方法

相続登記の手数料にあたる登録免許税は、原則として不動産の固定資産評価額の0.4%です。固定資産税が課税されない公衆用道路についても登録免許税は納める必要があり、課税額は下記いずれかの評価額の30%をベースに計算します。

■登録免許税の計算における公衆用道路の評価額のベース

  • 近傍地の単価(※固定資産評価証明書に掲載されている場合あり)
  • 建物が建てられる敷地(本地)の単価
  • 公衆用道路に面する複数の土地の単価

なお、共有持分の場合は、この評価額に持分割合を乗じた金額が課税標準となります。また、土地の評価額が100万円以下の場合は非課税となる特例があり、これは私道にも適用されます。

私道の相続登記漏れへの対応

登記申請できていない私道への対応

相続登記から私道が漏れてしまっていた場合でも、発覚した時点で適切に対応することが重要です。ただし、相続開始から時間が経過していると、相続人の増加や所在不明など、さまざまな問題が発生している可能性があります。ここでは、私道の相続登記漏れに気付いた際の具体的な対応方法を解説します。

遺産分割協議書の作成

複数人の相続人がいるケースで私道の相続登記漏れに対応するときは、遺産分割協議書を作成する必要があります。協議書には、対象となる私道の所在地・地番・地目・地積を明確に記載し、共有で取得する場合は持分も正確に表示します。また、固定資産評価証明書や登記事項証明書など、私道を特定するための書類も必要です。

協議書の作成にあたっては、相続人そのほかの共有者との関係も考慮し、通行に関する取り決めなどの特約も検討します。将来の紛争を防ぐため、私道の維持管理方法や費用負担についても明確にしておくことが望ましいでしょう。

相続人の所在確認と協力

相続人の所在確認は、戸籍謄本や除籍謄本を収集することから始めます。相続人全員の現住所は、住民票(除票)の取得や、戸籍の附票で調査します。協力的でない相続人に対しては、司法書士などの専門家を介して説明・説得を行うことが効果的です。どうしても協力が得られない場合は、不在者の財産を管理するための制度や、調停などといった手続きを検討します。

まとめ

私道の相続登記は見落としやすく、将来の不動産活用に重大な支障をきたす可能性があります。とくに建物の建て替えや不動産売却の際に問題となるため、早期の対応が重要です。私道の存在を確認するには、名寄帳や権利証、共同担保目録など、複数の資料をチェックすることが有効です。

私道の相続登記に関する問題は、土地の権利について解決しなければならない問題が生じたり、売却しようとしたりするときに発覚しがちです。そのような場合には、

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記事を書いた人

執筆者:宅地建物取引士 樋口 力敏

四谷不動産コンサルティング代表

樋口 力敏

1972年5月生まれ。1997年慶應義塾大学経済学部卒、住友商事株式会社財務部等を経て、2000年にアクセンチュアのパートナーらとコンサルティング会社設立。2008年に当社設立、代表取締役に就任。最近では都内の大地主のコンサルティングを約4年経験。借地権問題、相続問題を含む困難な不動産問題を多く解決してきた

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